メカニック
――――パトベセル――――



















●パトベセルとは…●
───『警偉庁青空警際署』。
警偉庁が新設した飛空戦艦型警際署「パトベセル」は、
本来ならば戦況に応じてどのような対応もできる万能な102番目の警際署になる“はず”だった。
近年、犯罪の形態は様々なものとなり、
交通網が発達した現代では、犯人が車輌を使って他県に逃走するなど、
県や区をまたぐ「県境を越えた犯罪」も増加していた。
そこで警偉庁は、区域や管轄に縛られない超法規的特殊警際署、
「警偉庁青空署」を発足させたのである。
広域的な捜査活動とどのような犯罪にも対応できる万能性、
そしてそれを可能にする最精鋭のエリート達を取り揃えた「空飛ぶ警際署」に
警偉庁は大きな期待を寄せていた。
……が、現在は傍若無人なヒカリ率いる独立愚連隊になってしまっている。
本来この青空署はその機動性を活かして主力から独立して行動し、
戦況に応じて臨機応変に対応する部署になる予定だったのだが、
ヒカリは「何にでも首を突っ込んでも許される部署」という誤った捉え方をしている。
――――パトロール・ジェクト――――



















●パトロール・ジェクトとは…●
歩行型多目的機械「ジェクト(ject)」。
首都圏の開発が進められるにつれ、作業の効率を求め新たな土木・建築機械の開発が求められた。
どのようなものにしようかと各企業の技術者達が頭をひねる中、空を見上げるとそこには冗談のような戦艦が浮かんでいる。
「……警際があんなモン造っちまうなら、俺達だって好きなモン造るぜ! イヤッハー!」
……悪ノリの連鎖である。
結果、新たに造られた作業機械は、まるでコミックやアニメに出てくるような「人型歩行」のロボットになってしまった。
各企業が己の知恵と技術と趣味をフルに投入して(特に趣味の部分)しのぎを削った結果、今やジェクト産業は競争の時代にすらなりつつある。
高額なためにまだ民生には浸透しきっていないが、いずれは車を買うのと同じように入手できる日が来ると予想されている。
そして、このジェクトを利用した犯罪───まさにコミックで言うところの「ロボット犯罪」も発生するようになった。
すぐさま警偉庁は警際用ジェクトを導入し、新たな犯罪の対処にあたらせた。
───しかし、ここでひとつの問題が起きる。
当初、警際用ジェクトは戦艦の中に専用のハンガーを設け、そこからどんな地域にでも出動できるよう予定されていた。
が、現在戦艦は警偉庁のものであって警偉庁のものではない。あの「七瀬ヒカリ」のものなのだ。
結果、警際用ジェクトは彼女の自由に扱われてしまう事となってしまったのである。
……戦艦に続き、警際用ジェクトまで。
失態続きの警偉庁上層部は口を揃える───「彼女は災厄を呼ぶ悪魔」なのだと。